まほの毎日

夫と子ども二人と地方に住んでいます。日常を書きたいと思います。

20231020_一帯一路って何だろう?

NHK総合「キャッチ!世界のトップニュース」2023年10月16日放送で、拓殖大学 海外事情研究所 教授 富阪 聡さんによる一帯一路の解説が非常にわかりやすかったのでまとめてみる。

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巨大経済圏構想「一帯一路」は152か国・32国際機関が関連する協力文書に署名、去年までに中国と参加国による投資額は約40兆円に達している。提唱から10年の節目で国際フォーラムが10月17日から2日間に亘って開催される。

 

○国際フォーラムの注目点
1 利益でつながる中国式 圧倒的な軍事力で世界に台頭しているアメリカに対抗して、「利益でつながる」ことを世界にアピールできるか
2 グローバルサウスとの運命共同体 共有しているということをアピールできるか

 

○現状
 労働集約型産業から脱却し、次なる発展のエンジンを国外に見出すための一帯一路であった。「世界の工場」と言われ、注文を受ける側から注文を出す側にシフトし、経済の体質を変えることを可能にした。顕著な成果は陸路貿易の活性化である。浙江省義烏市(ぎう)とスペインのマドリードをつなぐ「中欧班列」を、利益でつながることを目的に先に通し、煩雑な通関業務を無くしていった意味は大きい。

 

○融資焦げ付き問題のリスク
1.金融的リスク
一帯一路の沿線国は経済基盤が脆弱で外貨準備が足りない等、債務リスクを抱えている国が多い。

2.政治的リスク
 投資国の政権交代により突然一帯一路プロジェクトに逆風が吹く。
例1:2018年マレーシアでは中国から多額の投資を受けて財政赤字を招いたとしてナジブ首相が批判を浴びマハティール首相が政権に返り咲き。必要があればこれまでの中国とのプロジェクトを見直すと言い出す。最終的には継続となったが中国側はヒヤリ。
例2:イタリアの政権交代でメローニ首相が一帯一路から脱退。中国としては実質的な損害はなく貿易も依然継続だがG7で唯一の国だったので中国のメンツの問題で、できたら残ってもらいたいと思っている。

 

スリランカ・ハンバントタ港融資焦げ付きにつき、港の運営権が中国側に渡った件に対しインド洋への海洋進出との批判があることについて
 中国はハンバントタ港をインド洋における安全保障の拠点と位置付けている。明らかに単純なインフラ投資とは区別して考える必要がある。中国は14億ドルを港に投資したが寄港船舶数が伸びず回収不能になった一方で港の運営権を99年間取得、債務の罠と批判されている。スリランカはインド洋の真珠と言われる中東とアジアを結ぶシーレーンの要衝であり、日本、アメリカ、インド等が賛同する「自由で開かれたインド太平洋戦略」と重なる地域。インド洋におけるプレゼンスを示したい中国に対しインドやアメリカは神経質にこれをみている。ペロシ下院議員が台湾を訪問した時、中国はスリランカに衛星観測船を寄港させたためインドが神経をとがらせて緊張が起きた。中国は海上交通の要衝、ジブチ共和国に補給基地を持ち軍艦も配置済み。

 

アメリカと中国の対立激化の中で一帯一路をどのように発展させるか。
 元々アメリカの影響が及ばない地域を重視する傾向を持っており、米中貿易摩擦が激化する中で一帯一路が重要度を増している。トランプ政権下で対中制裁関税が発動された時、中国国際貿易促進委員会の高燕「東がダメなら西がある」と発言(元々毛沢東の言葉)。貿易額はアメリカによる制裁以降伸びており、2022には中国全体の貿易額の45.4%に達している。
 一帯一路構想はインフラ建設が必要な国と言う意味でも非西側先進国と言う意味でもグローバルサウスとの相性がいい。アメリカを警戒する国も多くイデオロギーにこだわらない中国と相性がいい。こうした関係をうまく使って上海協力機構BRICSを拡大していく流れの中で重要な位置づけとなる。

 

○中国景気鈍化の影響
ゼロコロナからの回復の遅れや不動産問題等からの国内経済停滞の中で、経済的・政治的リスクを抱えている国に投資することから、良く精査してやっていくほかない。

 

○対プーチン
中国にとってロシアは、中国が大事にしていきたい組織=上海協力機構BRICSにとって重要。突出して伸びているのが対ロシアの貿易で、天然ガスの決済に人民元が使われるなど人民元の国際化にもロシアが大きな役割を果たしている。とはいえ、中国としては西側との対立を決定的にはしたくないため警戒もしている。例えば中国とインドが上海協力機構で会談した際、ウクライナ侵攻に対するネガティブな発言をしてバランスを取るなどしている。経済優先といっても戦争のリスクは嫌うという特色がある。

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自分のまとめ
派手なスローガンの一方、目立つ成果はハンバントタ港の獲得、欧州との陸路貿易路の確立などに留まる。更にウクライナ侵攻以降、ロシアがもたれかかってきて中ロの友好関係が増し、一帯一路も天然ガス輸入を軸としたロシア色に強く彩られて見える。国内の景気鈍化を背景に対外融資は今後先細りの見通しだが、上海協力機構BRICSなど対先進国の枠組みで世界のリーダーとして振る舞いたい願望を実現するために、グローバルサウスと連携する上での一つの手段となり得る。